アイコン 2011 2.24 「だしの取りかた」レシピの秘密  その3
その3 ご賞味のしかた
さあ、あとは貴方が「だしの取りかた」を存分に味わう番です。Dezille Brothersデビューアルバム「だしの取りかた」。ご賞味のしかたを最後にどうぞ。旨味が詰まっています。

――そんなヴァラエティに富んだアルバムを、プロデューサーでもあるSWING-Oさんはどのようにまとめようと思ったんですか?

SWING-O「僕の場合、サウンド・プロデューサーの立場上、レコーディング前のミーティングの時点から、みんなを押さえつけて、幅が広がらないようにするんじゃなく、色んな方向に向かった楽曲をどうやったらスムーズに聴いてもらえるかということをずっと考えていたんです。そこで出した結論は、ライヴに近い一発録音でアルバムをレコーディングすることが出来たら、ブレずに上手くまとまるんじゃないかということ。もっといってしまえば、フェスを狙えるバンド・サウンドによるアルバムを作りたいと思ったんですね。だから、レコーディングにおいて録り直しだけは厳しく禁止しました」

――今の時代、パソコンを用いてのレコーディングは何度でも録り直しが出来ますし、仮に演奏技術がなかったとしても、音を加工することで体裁を整えることが可能になっていますよね。しかし、このアルバムで敢えて一発録りにこだわったのは、そうした現状に対するプレイヤーとしての意地、演奏に対するこだわりがあってのことですよね?

SWING-O「そうですね。これからは一朝一夕で成立しえないスキルを持った音楽家が大事になっていく時代だと思うんですけど、それをどう見せていくのか?という意味で、この作品では一発録りにこだわったんです。というのも、俺から見ても、この4人は素晴らしいプレイヤーなんですけど、後から音を重ねたり、直してしまうことによって、一般のリスナーにプレイの善し悪しが伝わらなくなってしまうと思ったんですね。だから、幾つかの箇所は直しましたが、極力一発録りで、ミスした箇所もそのままパッケージするつもりでレコーディングに臨みました。それが今のシーンを俯瞰したうえでの俺なりのメッセージでもあります」

――メッセージといえば、Dezille Brothersというバンド名も一つのメッセージであるように思いました。

白根「男5人が集まってる時点で男臭いし、様々な年代のブラック・ミュージックが自然に反映されていると同時に、このバンドは個々のメンバーが持ってるソウルの栄養素が出汁になっているような。しかも、それを“Dezille”なんていう、一見格好良さげに思える言葉に象徴させたアホでもあるっていう(笑)」
鈴木「ブラック・ミュージックが好きな、僕の周りのプレイヤー・サイドの人たちは「NYに行かなきゃダメだ」って言うんですけど、それって、アイデンティティが崩壊してる気がするんですね。そうじゃなく、僕らは日本が、味噌汁が好きだし、日本語が乗ったビート好きという大前提があるし、出汁にかけたバンド名の“Dezille”にはそんな思いも込められている気がします。つまり、「出す音は黒いけど、でも、日本人なんだぜ」ということ」
竹内「でもさ、俺たち、最初は椎名純平 & The Soul Forceって名前だったんですけど、バンド名を変えようってことになった時、最初はThe Soul Forceになりそうになったんです。でも、「え、それ、インパクトがないし、格好悪くね?」ってことでバンド名を考えることになったのに全然決まらなくて(笑)。で、ひねり出したのが“SOULの王将”って名前(笑)。それが第一候補で、その他には“スイカ泥棒”とか、“SUPER SOUL FORCE DELUXE”とか。そんなのばっかり(笑)」

――そのきわどいユーモアもまたDezille Brothersらしさといいますか(笑)。

椎名「そういう意味でもDezille Brothersで良かったんだろうね」
SWING-O「そうだね。ある種、本格派な音楽をやっているのに同時に遊び心もたっぷりっていうバンドのスタンスをDezille Brothersっていう名前で表すことが出来てよかったと思いますね。そういうネーミングにしたことでロゴ・デザインやプロモーション・ビデオなど、バンドに関わるあれこれに携わってくれる人たちが仕事そっちのけで面白がって入り込んでくれるんですよ。で、そういう要素は今のメジャー・シーンに足りないもの。重要なのは、素人にも透けてみえるマーケティング戦略ではなく、こっちがいかに楽しむかだと思うんですよね。そうやって楽しんでいく連鎖を繰り返していけば、全国津々浦々までDezille Brothersの音楽はきっと伝わっていくんじゃないかなって思ってますね」

 

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