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2010 12.17 | 「だしの取りかた」のとらえかた | |
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昨今、ご当地グルメが注目を集めているように、所変われば、品も変わるもの。つまり、土地が変われば、風俗や習慣、言葉や食べ物も変わるものだ。ソウルフードがアメリカン・ブラック固有の食べものだとしたら、日本の料理のベースには出汁(ダシ)がある。塩味や甘味、苦味や酸味とも異なる、旨味という成分は、実際のところ、日本人によって発見されたものであり、その旨味は出汁の組み合わせによって引き出される日本人固有の繊細な感覚だ。それゆえに、「日本人にとってのソウルフード、もっと言ってしまえば、日本人の魂は出汁にある」という表現は決して言い過ぎではないはず。 さて、そこに登場するのは、5人組バンド、Dezille Brothers。悪魔を意味する“Devil”やニューオリンズの名門リズム&ブルーズ・バンド“Neville Brothers”を想起させるバンド名は、一見格好良さげに響くのだけれど、Dezille→デジル→出汁と脳内変換すれば、メンバーの個性がにじみ出た音楽性と日本人の音楽であるという自覚、そして一匙のユーモアが示唆されたものであることは容易にお分かり頂けるだろう。その名のもとに集ったのは、2000年11月のシングル「世界」を皮切りに、3枚のオリジナル・アルバムと11枚のシングルをリリースしてきた椎名純平とSUPER BUTTER DOGやマボロシほかで活躍してきたギタリストの竹内朋康、100作以上のセッションを行ってきたキーボーディスト/プロデューサーのSWING-O a.k.a 45に、レコーディングやライヴの現場で頭角を現してきているベーシストの鈴木渉とドラマーの白根佳尚からなる5人だ。サンプリング・ソースを足がかりに、オリジナルを掘り下げていったヒップホップ以降のソウル・ミュージックを指向する彼らは、生演奏とデスクトップのプロダクションを自由に行き来出来る柔軟な感性と研ぎ澄ませた演奏スキルを、ライヴ・ミュージックであることにこだわった全12曲に注入。ほぼ一発録りでレコーディングされたファースト・アルバム『だしの取りかた』はここに完成した。 この作品は、洗練と原点回帰の狭間に咲くノーザン/サザン・ソウルや高揚感で宇宙に誘われるファンク・ミュージック、そして、ミラーボール瞬くディスコや摩天楼が似合う80年代のブラック・コンテンポラリー、さらには街の躍動感を吸収したヒップホップ/R&Bと、過去60年に渡るブラック・ミュージックの足跡を俯瞰し、縦横無尽に横断する。そこにはリズムとメロディの絶妙なコンビネーションがあり、演奏と日本語詞の歌が生み出す絶妙な抑揚や本音とユーモアのせめぎ合い、フレーズの応酬から生み出されるスリルや一体感がある。そしてなにより、海の向こうのルーツに敬意を払いながら、同時に島国日本のリスナーに真正面から向き合おうという姿勢は、バンド名に“Dezille”という言葉を戴く彼らの熱い心意気の証。その味わいは繊細にして奥深く、時に大胆で、繰り返し味わいたくなる中毒性もあるかと思えば、聴き手によって、その魅力は変化するはずだ。いささか男臭い気もするが……厨房に立つ男子にしか出せない風味があるのだとバンドのトレードマークが静かに物語っているとかいないとか。まずは心してご賞味いただきたい。 小野田雄 |