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ビールを片手に、一人井の頭公園を歩く。
3月の半ばを過ぎ今年の冬の暖かさが嘘のように寒い日が続いたが、桜の花がちらほらと咲く頃には神様は観念したのか、急に春らしくなり、澄んだ青空から降り注ぐ日差しは暖かく、春風が水面を走り水鳥の飾り羽を撫で、満開の桜の木を揺らす。
そんな光景を見ながらふと自分が泣いているのに気がついた。失った青春を想い、弱くなりつつある自分を思い。
うそです。
また、うそついちゃった。ごめんなさい、嘘吐きなんです。基本的に。しかも最近意味もない嘘がすきなおいらです。桜の季節に井の頭公園に足を運んだ事のあるヒトなら決して涙を流すような情景は一つもない事はお解りだと思いますが。いたい書き出しでゾッとした方は安心してください。照れ隠しみたいなもんです。かなり久しぶりで恐縮ですが、今回もだらしない感じで書きます。とりあえずお久しぶりです。
『桜は日本の花です』
うす桃色で樹全体が花束のように力一杯全力で咲くアレ。ご存知の通り桜は言うまでもなく日本の花である。
しかし、最近気がついたのだが、おいらあんまし桜の花が好きではないらしい。もちろんそれを情景に含む状況が原因になっているのだが。単純に視覚だけから受ける僕の桜の印象は、「なんか、咲き過ぎじゃない?」とか想ってしまう。立ち並ぶ木の一本残らずが、まるで『どかーん』と音が聞こえてきそうなほどに咲く姿に、なんとなく圧倒されてしまうのである。
それでも桜の花も見ないまま春を迎えるのもどうかと思い、年に一度はいわゆる”名所”に足を運ぶ。
そう、この”足を運ぶ”というのがよろしくないのかも知れない。どこに行っても人だらけの東京で、それぞれ楽しみ方は違うかもしれないが、全体的に「ぼく、のんきなのです」的な雰囲気をかもし出しているのが公園であると思う。おいらにとっての公園という場所は、静かに一人の時間を楽しんだりする場所である。何時も一人のくせに。とか意地悪言わないでね。毎日毎日汚い六畳一間の裸電球の下で自慰してばかりだと流石に気が滅入るときがあるのよ。はいはい。言葉が過ぎました。ごめんなさい。話を戻すね、そうそう、基本的に一年中「のんき君」な公園も、この時期だけは様子が一変してしまう。桜はもの凄い咲き方してるし、人の数も普段の何倍にも増える。そして何よりそ矢張り桜と言えば花見。花見イコール酒である。ブルーシートの上に座っている人間は論外、歩いている人は勿論、桜やそこらにあるベンチや机、池の鯉や水鳥、そこらの石ころにいたるまで『酒酒酒酒酒!とにかく酒!』という意気込みというか、気合いが染み付いてしまっているように感じられる。実際のところ僕も勿論嫌いではないのだが、なにもそこまでして、という気がしてならない。とくにこの時期のおじさんのパワーはすごい。だいたい普段おじさんといえば、疲れているか、電車で居眠りしてるか、酔っぱらっているか、奥さんに説教されてるか、娘に汚物扱いされているかくらいのモノなのだが、この時ばかりはスーパーな実力を発揮する。普段なら酒がのめりゃどこでも一緒なくせに、この時ばかりは焼き肉やら鍋など用意したり、少々特殊な例だが、ディーゼルの発電機まで持ち込んで辺りを煌々に照らし、テレビを見たりカラオケを歌ったり、あげくの果てにはこたつに入ったりしている連中もいる。まあ僕は個人的におじさんの張り切る姿は嫌いではないが、軟弱な僕はいやはや凄いなーと思ってしまう。
家に帰ってきてそういえばなんとなく携帯電話だが、写真を撮った事を思い出し開いてみた。
一枚目は池の水鳥の足下を泳ぐ鯉の写真。ま、特にたいした写真では無いが、ひとついうならば井の頭公園の鯉はデカ過ぎであるという事。これは冗談抜きで鯉を見る為だけに足を運ぶ価値はある。
二枚目は花見を興じるおじさんたちの写真。桜をとるふりしてさっと踵を返し取ったもの。これは良い写真だった。自分でも関心してしまう。少々ぶれてしまったところがまた非常に良い。
そして3枚目。これは撮っている時から多少面白かったのだが、家に帰ってみるとより面白い。なにが面白いのかというと。井の頭公園には大きな池があり、それを囲むように桜の木がまるで池に覆いかぶさるように咲いているところがとても見事なのだ。そしてその全体が見渡せる橋があり、多くの人はその橋の上から暫し眺めたり記念撮影などするのである。おいらも同様に写真を撮ろうとするのだが、どうしても上手くいかない。樹齢の経った見事な黒い幹が池を覆い、其の先にこれでもかと言わんばかりに咲き狂うところを撮りたいのだが、やっぱり上手くいかない。なぜかっていうと。残念な事に池の上には大量に二人のりの巨大な『白鳥さんボート』がバシャバシャと浮かんでいるからである。あっちにカメラをむけても「くえっ」こっちにむけても「くえっ」ってな具合でとにかく台無しなのである。なんかがっかりすぎて思わず笑ってしまったくらい。しょうがないので敢えて後ろに下がり全体の様子が入るように、いわゆる”引き”で撮っておいた。見事な池と桜をバックに、人ごみから記念撮影するアベックの後ろには大量の『白鳥さんボート』ここまで日本らしい光景はあまり無い気がする。
いやーなんか日本人に生まれて良かったなーとやけくそ且つ投げやりな事を考え、なんか意外に楽しかったなと想う。来年も行こう。
はしゃぎまくるおっさんと、池の白鳥ボートと人ごみを、そして何より桜の花を見に行こう。
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