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6月の初め、2週間僕は入院した。
初めて。
いや、正確には29年と数カ月ぶりの2度目か。まあ、29年前の入院は殆ど母の身体の中にいたし覚えていないのだから、初めてと言った方が良い。
勘の良い方は直ぐにお解りでしょうが、一応「どーゆーこと?」とか思った方に。
ま、大抵産まれて来た時って、最近では普通産婦人科に入院してるでしょ。まーいいや。なんか歳取ってくるとひねくれた事言いたくなるみたい。
今まで生きて来て、幾度となく「これは折れたに違いない」「今度こそいっちゃったに違いない」と思ったとき、病院に行ってレントゲンを撮ると必ず「軽い打撲ですね」とか言われ続けて来た痛がりで大袈裟なおいらがまさか骨折で入院するとは思わなかった。
なんか、よく解んないけれど『陳休性舟状骨骨折』とか『舟状骨偽関節』とか呼ぶらしい。
よく分んないうちに痛くなってて、よく分んないうちに折れてたから、まあよく分かんなくて良いや。んで、よく分かんないうちに治るだろうとか思ってたら、どうもあんまし簡単に治るものでもないらしかった。
3月の始めには既に判明してた事だけれど、シウツしないといけないらしい。
シウツ。オペのことね。未だに『シュジュツ』って上手く言えないの、おいら。
おまけに『全身麻酔』
どーでも良いけれど、いろんな意味でのその道のベテラン(?)は、全身麻酔のことを『ゼンマ』とか呼ぶらしいのね。なーんか悪の組織みたいでかっこいいー。漢字で書いたら更にそれらしい。因に『マ』って字は勿論、
『魔』
「出たなぁ!おまえも悪の組織、『善魔』のいち味かー!」ってな具合。
んー。ま、『善魔』だとね、ちょっと良い奴か悪い奴かイマイチ解んないね。いつもながらホントにどーでも良いね。
なんでまた、たかが手首の骨折なのに全身麻酔なのかっ?ていうと。どうも腰のとこにある骨を、あーしてこーしてとってきて、手首の折れてしまった骨の間に、あーしてこーしてくっつけて、終いにゃ針金みたいなんで留めるらしい。
ホント外科医って「大工か?!」って感じね。
で、その大工みたいな手術は、諸々麻酔をかけて切れるまでを含め、3時間半位で終わったのだけれど。その後の痛いこと痛いこと。変な話だけれど、太鼓を叩いてた時より痛いのよ。
そいでさ、やっと本題に入るのだけれど。
ふと気が付くとモーレツにおしっこしたいのよ。モーレツに。
2回言っちった。
看護士の同級生に聞いていたのだけれど、「『ゼンマ』の多くの場合、男性のシンボルの部分に管をさし込まれます」と。
普段、おしっこをするか否かは、常に脳からの指令の制御下にあるから。つまり麻酔で脳からの神経接続を絶たれてしまうと出ちゃうわけ。大っきいのも小さい方も。で、大きい方は食べていなけりゃ出ないから良いのだけれど、小さい方はいくらお水を飲まなくてもでちゃうのよ。
人間は生きてる限り、細胞で栄養を燃焼することによってエネルギーを得ているから。小学校で習ったやつがあるよね。モノが燃える時は、熱と水と2酸化炭素が発生すると。(どーでもいいけどさ。あのスチールウールとかいうやつを、アルコールランプで燃やすのって、魔法のように綺麗だった記憶が無い?そもそも鉄って燃えるんだ。ってとこに驚いたし、ハリーポッターにでもなった気分じゃなかった?映画みたことないけれど。笑)
でもさ、呼吸も止まるから人工呼吸機を付けて呼吸する訳なのだけど、心臓は動いているのね。不思議ー。さすが『ゼンマ』もう悪の組織というより、謎の組織!
そいで話は戻るが、僕の場合、手術時間が短かったせいか、ち○ちん体外間直結回路処置は施されていなかったの。多分だけど。
そいでさ、こりゃあ大変だってことで、なんとかおしっこしなきゃって思っても起き上がる事も出来ないし、下半身の方を覗いてみると、なんか手術着の下にはいつの間にか『T字帯(?)』なる紙状の物で出来たぺらぺらな、見た目にも頼りなく恥ずかしいものを履かされているわけ。あからさまに今このままおしっこでもしようものなら「取り返しがつきません」的なものなので、なんとかこの状況を打破しなければと思った。選択肢はそう多くはない。
1『溲瓶(し瓶)に出す作戦』
2『泣きながら失禁する作戦』
3『なんとなく闇に葬り去る作戦』
4『どうにかしてトイレでお引き取り願う作戦』
まず4番目の作戦はどうにかして避けたい所。だって想像しただけで嫌になるもん。
そして、3番目の作戦はありえない。作戦として成立していない。が、実は高校生の時僕はこの作戦を実際に実行して、急性膀胱炎になった事がある。馬鹿でしょ。
んで、2番目の作戦は、往々にして許されるのは小学校に上がる前まで、しかもリスクが大きい。更に親に「この子は将来大丈夫だろうか」という余計な不安を抱かせる事になる。29の男にはとでも無理。
そいで当然大人な僕は1の『溲瓶に出す作戦』を実行する事にした。
あたりまえだけど。
さあ、ミッションスタート!
ナースコールで溲瓶を用意してもらい、なんとか上半身をウィーンって(電動ベッドの音)起こして、ベットの上でちん○をし瓶に突っ込んで、「いざっ」て頑張っても、これがなかなか出ないのね。ちっとも。
ところでね、突っ込むっていってもね、それほど立派なモノじゃあ無いからさ。言うならば、頬杖ついた程度だけれど。
あ、息子の話はどーでも良いね。
膀胱の方は破裂寸前で、死ぬ程おしっこしたいのだけれど、父、日出光の息子の息子は言うこと聞かずに窓際で、頬杖つきながら「ふっ」って溜め息とか漏らしてるわけ。
おいー。言う事聞けよー。黄昏れてないでさー。とか思ってると、
「どうですかぁー、出ましたかー」
とカーテンの向こうからナースが声をかける。
うう・・・・。急かさないで。
僕はさらに日出光の息子の息子に指令を促す。
しかし親不孝な利男君は言う事聞いてくれない。やはり基本的にベッドの上でおしっこをするという行為自体間違っている。
しかもカーテンの向こうには年頃のおねえさん。
とてもじゃあないが出る気がしない。少し間違ったシュチュエーションを想定すると、おいら今、猛烈に惨じめ。ほんとアダルトビデオの男優さんって凄い。って、だんだん話の趣旨が違ってきているがお許し願いたい。こっちだって久しぶりの下ネタで恥ずかしいんだから。
お願い。頼むよ利男、お願いだから父さんの言う事聞いてくれ。いつもは頼みもしないのに元気一杯な時とかあるじゃん・・・。とか心の中で呟きつつ、上手い言い訳を考える。
「えーとー。あのー。ちょっと溲瓶の口の所が狭すぎて入りません」
だめだぁー。バレバレだし、正におやじギャグの王道に、セクハラをトッピングした、黄金の2段活用!って笑いをとってる場合ではないし、多分女性の看護士さんなら聞き飽きる程聞いてそうな台詞だ。
しかし放尿欲(あんのか?そんな言葉)は待ってはくれない。
いい加減下らない事を考えている暇もないので、素直に告げることにした。
「あのーどーしても出ないんですけど・・・」
ああ、なんという屈辱感というか、敗北感。
「そうですかー困りましたねー」
と、あんまし困ってなさそうな返事。
結局、すでに手術後の痛みよりも、膀胱の方の痛みがシャレにならなくなって来たので、4番目の『どうにかしてトイレでお引き取り願う作戦』を実行する事になった。
というか最初からこの作戦を選べばよかった。作戦担当者に文句を言いたい。そんな奴いないけれど。まあ、そうすればこんな惨めな思いをする事無かったのに。
四人掛かりで担がれ、車椅子に座らされ、トイレに座らされ、T字帯を外され、(きゃっ)そしてトイレから退室して頂き。
「いざ!!」
と、意気込む間もなくあっけなくミッションコンプリート!
しかし、この時の痛みは本当に想像を超えていた。もう何処がとか、何がとか解んないくらい。
人間の痛みというものはなんとかして数値化できないのかしら。例えば、歯医者さんとかで「痛かったら言って下さいねー」とか言われても、いったいどのくらいまで痛かったら言えばよいのか。あんまし痛い痛いって言ってると「男の子だったら我慢なさい!!」とか逆切れされそうだし。
逆に、痛み止めの注射などは「一番痛いとこに針が入ったら言って下さいね。痛い所に打たないと意味が無いから」とか言う。いったい何処まで我慢すれば良いのか。そもそも痛いから、痛み止めを打つのに。
せめて5段階とかで数値化出来れば、処置を施す人間の方から「今、痛み度2だから我慢しましょうねー」とか「今、痛み度2だからもう少し痛い所で薬を入れますからね」とか言ってくれるとこっちも余計な心苦労をしなくて済むのだけれど。
まあなんだかんだて無事におしっこを終えた時『恍惚』という言葉はこの時の為に存在したのではないかとあらためて実感した。(こっちの方はなんとなく数値化しなくてよい気がする・・。)
まあ、しかしなんと情けない事か。これまで生きて来て一番の快感がおしっことは。まあ情けない人間の情けない人生なので分相応といったところ。
えー、いいかげんおしっこの話だけでここまでひっぱるのもつまらなくなってきたので、もう止めにします。
最後になりますが。僕の初入院を心配して頂いた方々、しかも久々なのに残念なエピソードでホント申し訳ないです。
沢山の皆様、あらためまして、僕はだいたいこんな感じです。
ではでは。
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