21回目 愛しているから


 『春とは名ばかりで、雪も散らつく寒い日が続いています。その後如何がお暮らしでしょうか。お母さん達は風邪も引かず元気に暮らしていますのでご安心下さい。
   
 今日は信楽寺で永代経法要があり、お参りして来ました。光徳寺住職藤田徹文様の法話がとても心にのこりました。この先生はとても有名な方だそうで、年間三百回もの法要に法話を頼まれる方だそうで。たいして飾るでもなく関西弁。とても分りやすく話して下さいました。
 
 人はあほな人と、かしこい人が居ますが。中には、自分はあほだと言いながら、本当は心の中まであほと思って居ない人。そんなひとに、そうだネ、なんて相づちを打つと大変な事になる。
 又、自分はかしこいと思っているあほな人が居る。そして、自分はあほだと言いながらも、本当は他人からみてもかしこいひと。それは本当のかしこい人。又、自分もあほと認め、他人もあほと認めるあほもいる。 自分はどんな人でしょうか。
 人間はおろかなもので、たいていは一番最初の人が多いものである。

 人間は産まれて以来、想定外の出来事ばかりで、想定内というのは死ぬことだけなのだ。だから死ぬまでは、今日一日を悔いのないような生活をしましょう。九十才の人も二十才の人も明日があるかもわからない。ないかもわからないのはおなじである。だから歳を取っても希望を後々の人にあたえるような生き方をしましょう。
 と、話されました。

 お母さんも十五才で親元を離れ、社会人となり一生懸命働いて来ました。とても順調な人生で、良い人たちに巡り会い、助けられ六十才という年を迎える事が出来ました。今年は職業人として優秀の美を飾りたいと思っています。
 顔を写す鏡はあるが、心を写す鏡は無いのです。他人様への影響を考えながら。自分自身を振り返りながら。一年を終えたいと思っています。
「あ、畑さんが居なくなって良かった、清々した」
 なんて言われない様頑張ります。

 お寺でお時をよばれながら、坊守さんに、仙台で高校の先生をしている娘さんがいらっしゃるそうで、そのが娘さんが、自分の町は、東京事変のドラムの畑が出た町よ。と、生徒さんに云ったそうです。そうしたら、ワーすごいすごい。そんな有名人が出た町か。と言ったそうです。サインを貰えないかと生徒さんに言われたそうです。最近ではお母さんの知らない町の人たちからも、すごいすごいと言ってくれてとても嬉しいです。
 そんなことを云うと又、重圧を感じる利が可哀相ですが・・・・・。一生懸命さが皆に感動を与えるもの、利は充分それを伝える事が出来ていますよ。頑張って下さい。
 
 身体だけは気をつけて下さい。今夜、お父さんは、頼母子講へ出かけています。一人で野球を見ながら、くろと一緒に帰りを待ちます。

  では又ネ                           みどり』

                                                            
 まあ何時もの事ですが、なんだ?いきなり、とお思われるかと思いますが。多少混乱した方もいらっしゃるでしょうが、お許し下さい。
 上に記したものは母上からの手紙です。
 母(みどり)はたまにこの様な手紙をくれる。
 僕はたまにこの様な手紙でその都度感動する。
 舞台だろうが、演劇だろうが、音楽だろうが、スポーツだろうが、絵画だろうが、小説や文学、学問でも、ここまで感動する事はなかなか無い。
 
 あたりまえだ。
 
 身内の話だし。だいたいそんなもんこんなとこに載せるな、って話ですね。ただし別に僕は、母自慢している訳ではない。文章自体そんなたいしたものではないかも知れない。(ごめん、おかあ)けれど、この只一通の手紙は、この愚息の心の琴線に大きく、高らかに響く。それは何故か、それはとてもとても簡単なこと。か、どうか知れないが。
 それは僕が其の人に、

 『愛されているから』
 
 愛された人からの言葉はどんな”モノ”より心に響く。条件なしに。そして当たり前の様だが、母は未だに僕を愛してくれているのだと思う。と、思う。そして僕は、今注がれた愛をそのまま無条件に受け入れる事が出来る。それは世界中の人間、誰にでも出来る事だと思う。多分。
 
 でね、僕が今回言いいたかったのは、後の一行だけ。
 
 反対の事を想像して。『愛しているから』って伝えるの・・・。途方に暮れる。
 
 
 おかあ。
『汝の敵を愛せよ』という聖書の言葉がある。
 なこと出来る訳あるかい!と言いたい。外国の人の言葉はなんか妙に確信を付いているようで、逆に残酷だ。そんなこと言うと世界中の人から怒られそうだが、敵だろうが味方だろうが『愛す』という事は、その思想に近付く事を努力する事が素晴しいのであって、決して僕のような馬鹿には完遂できる事ではないと僕は思うんよ。30前にやっとそれに気づいただけなんよ。
 おかあ。おかあみたいにはおいら、まだなれんよ。
 
 ああ、おいらってひねくれ息子。ごめんな。

 内緒で皆様へ。
 あのう、なにも全部載せることなかったのにねぇ。母上とお知り合いの方はこのコラムの事、更に母上の手紙を載せた事は内緒でお願いします。

ではでは。



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