アイコン 2014 5.7

椎名林檎、5月27日リリースのニューアルバムは『逆輸入 ~港湾局~』!

[ Credit | Commentary from 椎名林檎 | Liner Notes ]


 昨年より続く、椎名林檎のデビュー15周年。その掉尾を飾る、5月27日(火)。つまりは16回目のデビュー記念日に、待望のニューアルバムがリリースすることとなりました。
 タイトルはずばり『逆輸入 〜港湾局〜』。作家として、これまでに数多のアーティストに楽曲を提供してきた椎名林檎が、それらの楽曲を"リ・インポート"した、セルフカバーアルバムです。
 広末涼子、ともさかりえ、TOKIO、PUFFY、栗山千明、SMAP、真木よう子、野田秀樹。彼らのために書き下ろした11曲に新たな命を吹き込むべく、本作では気鋭のアレンジャー11人に編曲を依頼しました。それぞれ個性の際立つオケに、椎名林檎が自在なボーカルで応じていて、いずれの楽曲も新しい魅力にあふれています。選曲の妙、人選の妙といった、林檎女史のセンスを味わいつつ、近年ますます艶を帯びるボーカルの魅力にも、大いに耽溺していただきたいものと思います。



■椎名林檎セルフカバーアルバム『逆輸入 ~港湾局~』
 2014年5月27日(火)発売


 初回限定生産盤(左:TYCT-69017 3,500円(税抜) / 3,780円(税込)
 通常盤(右:TYCT-60035 3,000円(税抜) / 3,240円(税込)

 初回限定生産盤はケース付きハードカバー・ブック仕様
 初回限定生産盤ご購入者先着特典:B2ポスター
(一部お取り扱いのない店舗及びECサイトもございます。店頭にてご確認下さい。)

 ★予約購入者限定特典:レコ発ライブ「ちょっとしたレコ発2014」先行抽選予約



  曲名 (提供先) / 作品 アレンジャー
1  主演の女(PUFFY)
 アルバム収録曲/2009.6.17 release
 大友良英
2  渦中の男(TOKIO)
 シングル収録曲/2008.9.3 release
 上田剛士(AA=)
3  プライベイト(広末涼子)
 シングル収録曲/1998.10.7 release
 前山田健一
4  青春の瞬き(栗山千明)
 シングル収録曲/2011.11.23 release
 冨田恵一
5  真夏の脱獄者(SMAP)
 アルバム収録曲/2012.8.8 release
 大沢伸一
6  望遠鏡の外の景色(野田秀樹)
 NODA・MAP第17回公演『エッグ』劇中音楽/2012.9月
 村田陽一
7  決定的三分間(栗山千明)
 シングル表題曲/2011.3.2 release
 中山信彦
8  カプチーノ(ともさかりえ)
 シングル表題曲/1999.1.27 release
 小林武史
9  雨傘(TOKIO)
 シングル表題曲/2008.9.3 release
 根岸孝旨
10  日和姫(PUFFY)
 シングル表題曲/2009.2.25 release
 日高 央
11  幸先坂(真木よう子)
 映画『さよなら渓谷』エンディングテーマ/2013.6月公開
 佐藤芳明



アレンジャーのラインナップたるや!彼らの手によって、楽曲たちがどのような変化を遂げるのか。そこに椎名林檎のボーカルはどう乗るのか。楽しみでなりません。

というわけで、5月27日(火)発売『逆輸入 〜港湾局〜』、ご期待ください。

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Credit

starring 椎名林檎


「主演の女」 arrangement & guitars 大友良英
 大友良英スペシャルビッグバンド
 piccolo 斉藤 寛
 clarinet 井上梨江
 tenor sax 鈴木広志
 soprano sax 江川良子
 baritone sax 東 良太
 trumpet 佐藤秀徳
 trombone 今込 治
 tuba 木村仁哉
 accordion 大口俊輔
 piano 江藤直子
 synthesizer 近藤達郎
 electric bass かわいしのぶ
 drums 芳垣安洋
 vibraphone, glockenspiel 相川 瞳
 marimba, timpani 上原なな江
 conga, djembe, metal percussion 小林武文
 coordinator 佐々木次彦 MOUSTACHE 宮田文雄 Face Music


「渦中の男」 arrangement & track composing 上田剛士(AA=)
 recording & mixing engineer上田剛士 & 草間 敬(Kurid Int’l)
 recorded and mixed at SWEEP-ZWEEP STUDIO, NON-AGRESSION STUDIO
 vocal recording by 井上雨迩
 recorded at prime sound studio form
 AA= appears by the courtesy of Speedstar Records / Victor Entertainment


「プライベイト」 arrangement & instruments programming 前山田健一

「青春の瞬き」 arrangement, instruments & treatments 冨田恵一

「真夏の脱獄者」 arrangement & mixing 大沢伸一
 electric guitar 高柳 央 (Oddity)
 大沢伸一 appears by courtesy of AVEX ENTERTAINMENT INC.


「望遠鏡の外の景色」 arrangement & trombone 村田陽一
 piano 笹路正徳
 wood bass 高水健司
 drums 山木秀夫
 trumpet 西村浩二、奥村晶、菅坡雅彦、横山 均
 trombone 鹿討 奏、鳥塚心輔、池城 勉
 alto sax 本田雅人
 tenor sax 竹野昌邦、吉田 治
 baritone sax 山本拓夫
 flute 高桑英世
 oboe 庄司さとし
 clarinet 山根公男
 violin グレート栄田、金原千恵子、滝沢幸二郎、小倉達夫、矢野晴子、浜野考史
 viola 山田雄司、高嶋麻由
 musician coordinator 宮田文雄 FACE MUSIC


「決定的三分間」 arrangement & programming 中山信彦
 recording engineer 永井はじめ
 recorded at Samsa Studio
 electric guitar 椎名林檎
 vocal & electric guitar recording by 井上雨迩
 recorded at prime sound studio form
 instruments technician 松村忠司


「カプチーノ」 arrangement & keyboards 小林武史
 guitars 名越由貴夫
 drums 玉田豊夢
 programming & guitar recording by 安達 練
 recorded at OORONG TOKYO STUDIO


「雨傘」 arrangement & electric bass 根岸孝旨
 drums 河村“カースケ”智康
 electric guitar 生形真一
 生形真一( Nothing's Carved In Stone) by the courtesy of Epic Records Japan


「日和姫」 arrangement, electric guitar & synthesizer 日高 央(THE STARBEMS)
 electric guitar 越川和磨 (THE STARBEMS)
 electric bass 原 直央 (ASPARAGUS)
 drums 一瀬正和 (ASPARAGUS)


「幸先坂」 arrangement & accordion 佐藤芳明
 Intro: cited from “YOUR SON”


recording & mixing engineer 井上雨迩
assistant engineer 米津裕二郎・近藤信也・田中雄司・五味涼太 prime sound studio form
山田和範 SOUND INN、 太田敦志 prime sound studio
鶴田真之 Bunkamura Studio
recorded at prime sound studio form, SOUND INN
mixed at prime sound studio form, prime sound studio, Bunkamura Studio

mastering engineer 宮本茂男 form THE MASTER

english translator Robbie Clark
spanish translator Hikaru Iwakawa

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Commentary from 椎名林檎

「主演の女」arranger 大友良英
今やお茶の間に浸透した音像(※『あまちゃん』の劇伴)を仕掛けた方と、早々にご一緒できて光栄でした。これまで私がビッグバンド編成などでご一緒させていただいた方々は比較的繊細な特性をお持ちなのですが、大友先生は破格の大胆さが素敵。「聴こえなかったけどオッケー」とか「いい感じでやっといて」といったラフな言葉が飛び交っていました(笑)。そんな何でもアリのビッグバンドがこの一曲目にピタリとハマって大成功でした。

「渦中の男」arranger 上田剛士 (AA=)
上田先生の引き出しに、私はたとえばトム・ヨークのような壮大な宇宙を感じています。ハイティーンの頃に魅了された憧れの人でした。まだデビューしたばかりの頃、RISING SUN(1999年) に斎藤ネコ(Violin)さんと私(弾き語り)の二人で出演した時、初めてお会いして、演奏を褒めて下さって。デジデジしいものだけではなく、こういうのも分かって下さるのだなとうれしく思いました。以来、いつかは絶対に何かをお願いしよう、ご一緒させていただこうと決めていました。

「プライベイト」arranger 前山田健一
ヒャダイン先生は頓智の利いた好青年です。何をされても確実で早くて面白くて“高性能”という言葉がぴったり。この曲は私から「どこまででもキラキラにしてほしい」とリクエストを出しました。私も、もう三度目の年女ですから、ただではこのリリックを歌えないのですって(笑)。でも彼のキラキラサウンドをモニターしながら歌ってみたら、見事なお姫様扱いで、気持ち良く歌ってしまったのでした。全打ち込みで本来は狭い世界でしょうに、ちゃんとアンサンブルに拡がりがあって、ちっとも息が詰まらない。広い視野をお持ちの素晴らしい方ですね。

「青春の瞬き」arranger 冨田恵一
私がデビューした頃に聴き始めたキリンジを手掛けていらした冨田先生は、マエストロとして、憧れの存在でした。この曲は東京事変の解散ツアーで演奏してしまったために、あの場にいらしたお客様は大事な門出に於ける私の口上として記憶して下さったようですね。冨田先生もそのことを知って下さり、踏まえた上での細やかな配慮をして下さったようで、流石です。実際には(栗山)千明ちゃんがまさに少女から大人になろうとしていた、あの美しい季節を彩りたくて書き下ろした曲です。

「真夏の脱獄者」arranger 大沢伸一
SMAPのお客様がお聴き下さった時に、全く別のバージョンとして楽しんでいただけるよう心掛けて、アレンジをお願いしました。大沢先生の作品はもちろんデビュー前から聴いていました。また、私は兄の影響でブラックミュージック育ちでもありますが、その兄が一番初めにお世話になった方でもあり、当時すごく羨ましかったです。妹の方も、お力を拝借するのを赦されるときが、やっといま訪れたのだと思います。

「望遠鏡の外の景色」arranger 村田陽一
たとえばバート・バカラックのワルツから得られる、何とも言い難いショック。それを舞台『エッグ』に持ち込みたくて書きました。オリジナル・ラヴの『風の歌を聴け』(1994年)のカッコいいホーンは外国の方によるものとばかり思っていたら村田先生がたでした。緻密な設計と的確な人選をなさる方。私が17歳の時、コンテストでトロフィーを渡して下さった笹路正徳(Piano)先生とは、この現場で18年振りに再会しました。皆さんが奏でる音の余りの美しさに、涙が零れました。

「決定的三分間」arranger 中山信彦
最初のお手合わせは『勝訴ストリップ』。事変の後期はツアーにも参加していただきました。このノブ先生、実際にはいろいろな引き出しをお持ちの方ながら、私の依頼したミッションはほとんど化学調味料をご提供いただくという内容でした。普段は天然素材とのブレンドで、今回はその化学系のみ。ノブ先生がよく召し上がる日清の味がここに活きていると思います。私だって日清好きですもの。この一曲は大変気に入りました。

「カプチーノ」arranger 小林武史
私にとっての小林先生のサウンドとは、サザンであり原由子さんのソロであり、またYEN TOWN BAND etc.でした。ロマンティックな小林先生なら、この曲本来のセンチメンタルな魅力を引き出して下さる予感がしていました。如何なる素材も普遍的なポップスへトリートメントして下さる確かな手腕のお蔭で、昔の曲なのにすごく自然に歌えました。と言って、「レシピが分かった」みたいな単純な感じは全くありません。やっぱり彼の腕にかからねば、絶対にこうはならないのです。

「雨傘」arranger 根岸孝旨
根岸先生へお願いするにあたっては、長田進先生のギターをイメージしていました。でも根岸先生にお会いし、サウンドの方向性を擦り合せて行く中、私が想定していたブリティッシュ寄りの端正なアプローチの可能性は無くなったのです。それで、普段からもっと獰猛なプレイをするギタリストはどなたかという話になり、私は生形くんを推薦しました。根岸先生にお願いしなければ得られない、極レアなセッションと相成り、満足です。

「日和姫」arranger 日高 央
日高先生とは、千明ちゃんのレコーディングをしていた頃、一口坂スタジオでたまたまいらしていたPUFFYのお二人からご紹介いただいたのが最初でしたでしょうか。その時には、すでにこのプロジェクトを想定して居り、その場で依頼しそうな勢いでしたが、「時が来たら連絡しますね」と伝えていました。ビークルの秘伝レシピで仕上げていただけましたし、作業進行中も、演奏家の皆さんと共にずっと爆笑させてくださり、お腹いっぱいです。

「幸先坂」arranger 佐藤芳明
映画『さよなら渓谷』に於いては、エンドロールへの提供で、後奏がいつまでもひたひたと続いて欲しかった。一方、今回はアルバムのクライマックス。むしろ導入部を鮮烈に演出したい。そこで反則技ながら、芳明先生の銘曲「YOUR SON」を投下していただきました。先生とは「りんごのうた」からのお付き合い。作曲家としても、もちろん演奏家としても、毎度見逃せません。

(構成/内田正樹)

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LINER NOTES

-- 時に“逆輸入”されたプロダクトにはレアなものが見受けられる。これは対輸出国や生産現地の市場環境や法律に則した生産を行うため、国内規格とは異なる仕様や性能となるからだ。そのため自動車やオートバイ、アパレルや腕時計、家電等に於いて、最大出力が異なるものや、稀少なフォルムやカラーリングのものが生まれる。そう、つまり好事家にとって“たまらない掘り出し物”との遭遇が、しばしば起こるのである --
 デビュー15周年を迎えた椎名林檎の記念パッケージは、その波乱の歴史とは裏腹に極めて整然としている。昨年リリースされた『浮き名』、『蜜月抄』といい、今年3月にリリースされた『党大会 平成二十五年神山町大会』といい、いずれも彼女の音楽性を総括しつつ、新たな魅力の発見に繋がる優れた機能美さえ備えていた。
 だが彼女には待望する多くの声を耳にしながら、これまで着手してこなかった或るテーマがあった。それは自身が他のアーティストへ提供してきた楽曲を歌う“セルフカバー・アルバム”だった。 
「そもそも提供曲とは、あくまで先様からのオーダーにお応えして、精一杯の支度を揃えてお渡しした、唯一のものです。でも本当にお客様からのご要望が多かったので、ライブのアンコールに、人気の高い曲を演奏するような、そんな感覚で、15周年リリースの締め括りにご用意させていただきました」(椎名)
 『逆輸入〜港湾局〜』。それは満を持して放たれる待望の一枚である。コンセプトは、錚々たるアーティストへ提供した11曲のアレンジを、やはり錚々たる11人のマエストロが手掛けるというものだ。
 どの曲を選び、誰に託すのか。そこには彼女にとっての“J-POP”という同時代的音楽体験であり、作家としてのマナーであり、延いては今なお進化を続ける現役選手としての生理が反映されている。
「一度は自分の手を離れた曲を歌うのですから、やはり私自身がドキドキするような、新しい要素が欲しいと思いました。そこで言わば私がJ-POPを教わった方々や、近年ご活躍の皆様のお力をお借りしたという次第です。私の場合、通常必ず大方の楽器をデモ演奏/録音して、シミュレーションを行った上で、本番の録音に挑みます。要するに或る程度の編曲までを含め“作曲”と認識しています。つまり今回のアレンジャーの方々は、或る部分に於いては、同業者とも言えるのです。だからこそ、自分の手では絶対に得られない、その方の肉体や頭脳や人生でなければ生まれ得ないサウンドのみを戴きたい。そんな期待を以て皆様にオファーいたしました」(椎名)
 彼女の期待通り、全ての曲はアレンジャー各々の采配に則った演奏形態により、ジャズやロック、R&B、エレクトロとあらゆる音楽のフレーバーを内包し、曲によってはJ-POPのエッセンスを散りばめられ、唯一無二の姿に生まれ変わった。その上、提供先でのパフォーマンスとの明確な差別化だって忘れてはいない。
「例えば男性アーティストに提供した曲を英語詞にしたのは、多少男言葉が過ぎる上に、それを女の声で歌ってしまうと、先様のファンが楽曲を御愛顧いただいた際のイメージを崩しかねないと思ったからです。むしろ別物として聴いていただけた方がいいのかなと」(椎名)
 1998年から2012年までに書かれた曲の全てが、さながら2014年のオルタナティブなサウンドとして成立している点は、デビュー当初より“作家・椎名林檎”が描いてきた楽曲各々が秘めた、高いポテンシャルの証に他ならない。またそれは “ボーカリスト・椎名林檎”としての破格な器についてもやはり同様である。
「とんでもないことです。作詞と歌唱については相変わらず片手間でお恥ずかしい限りです。仕掛け側としてのコネクションが欲しくて、オリジナル作品でもデビューしてしまったものの、まあ何かと逃げ腰でしたし、まさかここまで続けてこられるなんて、想像もしていませんでした。こんな自分の扱い辛い声で歌を入れた時、曲にどう命が宿るのか、我ながらレシピが分かっているようで分かっていないのでしょうし、未だにそこを見極められないからこそやめられないのかもしれませんね。ただ、子供の頃に思い描いていたような無色透明な曲や、男性が目を背けたくなるような“女による女のための曲”が書けるようになってきたのかな、という手応えは、僅かながらですが感じ始めています」(椎名)
 作家業というスタンスに於ける提供(=輸出)というミッションがあってこそ生まれ、“逆輸入”というアップデートをかけられた11曲は何もかもがレアで新しい。華美で、キャッチーで、目くるめく感動が矢継ぎ早に襲ってくるこの『逆輸入〜港湾局〜』には、ポップアルバムとしての理想的且つ究極的な悦楽が満ち溢れている。
 最後に。椎名の提供曲は本作の収録分で全部ではない。しかもタイトルに添えられた“港湾局”には、どこか“たまらない掘り出し物” の続きを期待させる響きがある。だがそこを訊ねても、彼女は悪戯っぽい笑みを返すだけ。 「だからこそやめられない」とは、リスナーが椎名林檎に抱いてきた15年分の感想でもあるのだ。

(内田正樹)

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